こんにちは、フロントエンドチームと依頼体験改善チーム所属の谷(@high_g_engineer)です。
本記事は、以前公開した記事(依頼体験改善プロジェクト フロントエンド定例 2022/12/2)の続編です。
依頼体験改善プロジェクトの現状とグロース活動でどの様なことを行っているかを紹介します。
依頼体験改善プロジェクトについて
依頼体験改善プロジェクトの目的
ランサーズ(https://www.lancers.jp/)には、お仕事の依頼作成フォームがあるのですが、1ページあたりの情報量が多く、入力の負荷が高い為、入力途中で離脱するユーザーが目立ち、ユーザー体験が悪い状態になっています。
依頼体験改善プロジェクトの目的は、上記のような悪いユーザー体験を見直し、依頼フォームを新しく作り変えることで、諸々の状態を改善し、ユーザーに使い勝手が良い依頼体験をお届けすることです。
新旧のフォーム比較
新しい依頼フォームは、一問一答形式にすることで、1ページあたりの情報量を少なくし、入力の負荷を下げ、選択肢を選択するだけで簡単にお仕事の依頼作成ができるような体験を目指しました。
一問一答形式の新しい依頼フォームのことを「選択式依頼フォーム」と呼んでいます。
旧式依頼フォームと選択式依頼フォームでは以下の様なUIの違いがあります。
旧式依頼フォーム
選択式依頼フォーム
見比べると、視界に入る情報量が減り、質問に対しての入力負荷が低下したことで、ユーザー体験の向上が図れている様に思われます。
併せて、開発技術スタックも併せて刷新しており、CakePHP2 + jQueryで構成されていたものをバックエンドとフロントエンドで完全分離し、フロントエンドには、React + TypeScriptを採用している為、開発者体験も向上しています。
依頼体験改善プロジェクトの現在
選択式依頼フォームは2023年2月からスモールスタートし、現在は9カテゴリ中4カテゴリで選択式依頼フォームが利用できます。
選択式依頼フォームをリリースしてからは、下記のような良い効果が出ています。
・依頼作成中のユーザー離脱率が減少
・依頼作成開始から完了までの時間短縮
・作成される依頼文がシンプルになり、依頼に対する提案数が増加
ここまでを読んでいると、順風満帆なプロジェクト進行に思えるのですが、リリースしてすぐに目立った効果が現れた訳ではありませんでした。
その為、元々は選択式依頼フォームの全カテゴリ展開を急ぐことを目標としていたのですが、部署のリーダーとチーム間でも議論を重ね、選択式依頼フォームが不完全なまま全カテゴリ展開を急ぐよりも、1カテゴリごとのグロース活動を徹底する方向にプロジェクトの舵が切られました。
以下では、日々のグロース活動でどの様なことを行っているかをお伝えいたします。
グロース活動について
ランサーズのグロース活動
ランサーズのグロース活動は、以下のような手順を踏むことが多いです。
- 確認したいデータに対してクエリを組む
- Redashでグラフの状態を確認する
- 仮説を立てる
- 施策を取り組む
依頼体験改善チームでもこの手順で仮説立案や施策への取り組みを行っており、毎日の朝会でRedashで以下の様なグラフを確認しながら、施策は上手く行っているか?何か問題が無いか?をコミュニケーションしています。
グロースに対する個人的な違和感
仮説を立てる際に、データを何も見ないよりも見た方がいいのは確実なのですが、グラフの上がり下がりを見ただけでは、リリースした施策の動向をなんとなく確認したり、ボトルネックとなっている箇所を特定することは出来ても、
・ユーザーがサービスの何に対してどんな感情をいだいているのか
・リリースした施策の機能やUIが意図した通りユーザーに使われているのか
・ユーザーが本当に満足しているか
などの細かいことは分からないのではという考えが常に頭の中にありました。
その為、たとえ依頼の登録数などの数字が上がっていたとしても手放しで喜べず、逆に数字が下がっていたとしても一概に直近の施策だけが悪いとは言い切れないといったことがあり、ユーザーへの本質的な価値提供をできているのか?ということを自問自答し、悶々とした気持ちを抱えることが多くなりました。
そして、仮説を立てたり、それに対する施策を考えたり、それらの説明を他人から受けたりする度に悶々とした気持ちが加速度的に増していきました。
Datadog RUM のSessions&Replays を活用したデータ分析
少し話が変わるのですが、今から5ヶ月ほど前に社内でDatadogの勉強会がありました。Datadogとはサーバ監視やデータ分析を行う為のツールです。
その時の自分は監視ツールに深い知見がない為、話半分で聞いていたのですが、slackで「Datadogと深い友達になれなさそう」という発言をしたところ、同僚の勇魚さん(@isanasan_)から毎日少しずつDatadogを活用することをオススメされ、次の日からチームの朝会でDatadogを利用したデータ分析がスタートしました。
Datadogには様々な機能があるのですが、チームでは主に Real User Monitoring(通称 RUM)のSessions&Replays という機能を利用しています。
Sessions&Replaysは以下のような画面構成で、ユーザーの画面操作ログがリスト表示されており、ブラウザ、デバイス、OS、URLパス、ユーザー情報、期間などで様々な粒度のフィルタリングを行うことが可能です。
さらに、Sessions&Replaysには名前の通り、以下の2つの機能が存在します。
・Sessions機能(ユーザー操作のセッションログ確認機能)
・Replays機能(ユーザー操作の動画閲覧機能)
Sessions機能は、以下のような画面になっていて、ユーザーの操作が、どのくらいの時間、どんな操作が、どんな要素に対して行われたかをセッション単位で細かく確認することが可能です。
Replays機能は、以下のようなユーザー操作動画を確認できる画面になっています。
マウスカーソルの動きやUIの操作、実際にユーザーが入力したテキストなどが確認できる為、Sessions機能よりもさらに具体的で細かい分析の材料にできます。
※ 料金の関係でReplaysの動画はランダムで限られたセッションのみになります。
※ その為、基本の分析はSessionsのデータを頼ることになります。
これらの機能のおかげで、N1分析がとても捗り、チーム内で以下のような疑問が次から次へと湧き出るようになりました。
・あるユーザーが選択式依頼フォームを正しく利用してくれているか
・全体フローのうち、どこかに問題がないか
・操作に詰まった画面があれば、なぜ詰まったのか
・施策でリリースしたUIを正しく使ってくれているのか
・UIに気づくまでの導線は適切か
・ヒントが理解されていない為、もう少しライティングを改善してみてはどうか
Redashのグラフの上がり下がりのみを確認していた頃は、「なんとなくここが課題なのかな?」「施策の効果がなんとなく出ている気がする」等といった感じの解像度が低いコミュニケーションが横行しており、本質的な価値提供の為の議論があまり出来ていない状態でした。
しかし、DatadogのSessions&Replaysの活用を習慣化したことで、ユーザーの解像度が上がり、リリースした施策の機能やUIが正しく扱ってもらえているか、ライティングを修正した後のユーザーの行動がどう変化したか等のより踏み込んだ分析を行うことが可能になりました。
それにより、本質的な価値提供に対するチーム内のコミュニケーションが活発化し、元々抱えていたグロースに対する個人的な違和感も払拭することが出来ました。
グロース活動のまとめ
グロースのあるべきは、ユーザーに対して常に適切な価値提供を行うことです。
ユーザーへの適切な価値提供を行う為には、ユーザーが抱えている本質的な課題を見つけ出す必要があり、その為にはユーザーの解像度を上げる活動が必須になってきます。
ユーザーの解像度が低い状態だと、仮説立案や施策が当てずっぽうに近い状態になってしまい、正しい課題へのアプローチが難しいだけでなく、時間と費用が無駄になりかねません。
ユーザーの解像度を上げる為に、ユーザーへ直接ヒアリングやアンケートを取れると良いですが、そういった取り組みが難しい場合でも Datadog RUM Sessions&Replays を活用することで、十分にユーザーの解像度を上げることが可能です。
グロース活動にお悩みの際は、まずはDatadog RUMを活用してみることをおすすめします。
本記事を最後までお読みいただき、ありがとうございました。
これを気に、是非、ランサーズの選択式依頼フォームを使ってみてくださいね!