こんにちは、フロントエンドエンジニアの谷(@high_g_engineer)です。
本記事では、最近コツコツ読み進めている書籍「UXデザインの教科書」を紹介させていただきます。
本書の序文に大切なことがまとまっている為、その紹介とUXデザインの代表的なプロセスであるHCDプロセスについての紹介になります。
本書の目的
本書は、UXデザインの理論とプロセス、手法について体系的に解説することを目的としています。
これからUXデザインを学びはじめる人から既にUXデザインを取り組んでいる人まで幅広く対象としている一冊です。
対象は「製品やサービスを使う体験」
私たちは日常的に、たくさんの製品・サービスを使って日々生活しています。
朝起きてから、学校や職場に向かい1日を過ごし、自宅に帰って寝るまでの間、あらゆる製品・サービスに囲まれています。
私たちが製品・サービスを使うのは、それを使うことでうれしい結果が得られるからです。
逆にうれしくないと感じる製品・サービスは一度使っても、次第に使わなくなることでしょう。
UXデザインは、製品・サービスを体験する側と提供する側の両者の関係に着目することからはじまります。
使う人の体験を考えたものづくり
例えば、スマートフォンアプリやWebサービスなどを作る場合、自分が開発者だとしたら、どのようなものを作るか考えてみてください。
こういった質問の場合、ほとんどの人は自分が困っていることを解決したり、便利になったりするような、自分が欲しいと思うサービスを考えることになります。
しかし、自分があったらうれしい、欲しいと思うサービスは、自分以外の人がどれくらい望んでいるでしょうか?
企業がサービス開発を行う場合、利益を出すことも併せて考えなければなりませんが、自分たちが欲しいと思うものを作っても実際に使われないと利益が出ません。
大切なのは、「どれほどの人がうれしいと感じてくれるか」ということです。
「使う人の体験が良いものになるように」と考えるのは、ものづくりに関わる全ての人の願いですが、これを実現するのはなかなか難しいです。
特にユーザの状況を理解することは思った以上に難しく、同じ様な属性の人であっても生活の中で実践している行動は全く違ったり、同じ行動をしているのに考えていることは正反対だったりするのです。
また、ちょっとした表現の仕方や言葉の選び方がよくないだけで、使う人にはまったく理解できないものになってしまうこともあります。
こうした現実から、本当にユーザーに望まれていることを探し出すために、また、多くの人がうれしいと感じるような体験を実現するために、UXデザインが必要になってくるのです。
手法だけでなく理論やプロセスの考え方が大切
UXデザインはサービス開発の分野では、既に当たり前のように実践されていますが、短期的に効果が得られることを目的に、その手法が使われる傾向があります。
UXデザインの手法をただ実施するだけでも実施しないよりかは確かに効果はありますが、UXデザインの理論やプロセスに対する知識があれば、その手法を適用する目的や意義について考えることが出来るようになり、さらに良い結果を導くことが出来るはずです。
製造業でもUXデザインに取り組む必要性が高まっており、その背景には、製品に対する消費者の価値観の変化があります。
自動車を例に出すと、昔と今で下記のような変化があります。
昔 → 所有しているだけでステータス
今 → 新しい体験をもたらしてくれるかどうかに価値の意識がシフト
この関係は、さまざまな生活用品、製品・サービスにも同様に発生しており、機能や性能ではなく、ユーザーが製品・サービスを利用する際の経験を通して、実現できる生活の質の変化に価値が置かれるようになってきています。
こういった価値の創出の為にUXデザインの手法が適用されますが、UXデザインは小手先の手法ではなく、また、流行りのテクニックでもありません。
先駆的な人たちが、「ユーザーに本質的に良いものを提供したい」という想いでチャレンジしてきた成果の蓄積によって成り立っている一つの学問領域でもあるのです。
HCDプロセス
HCD(Human Centered Design:人間中心デザイン)プロセスは、UXデザインを実践するためのプロセスとして活用されるデザイン理論です。
これは特定のデザイン対象に限定されず、あらゆるものに当てはめられる考え方です。
HCDはその名の通り、ユーザーを中心においた開発プロセスです。
どんなビジネスでも顧客のことを考えないビジネスはないはずで、どんなサービス開発もすべてはユーザーのために存在しています。
しかし、どんなユーザーなのか、何を求めている顧客なのか、といった共通の理解が、メンバー間でないままサービス開発が行われることは少なくありません。
HCDプロセスは、ユーザーが求めていることを明確にし、それを開発に関わる誰もが目標にしながらプロセスを進めるための基盤として機能します。
ISO 9241-210:2010では、HCDプロセスの相互関係を以下の様に定めています。
HCDの活動では大きく5つの活動を元に「ユーザー要件を満たした設計」を目指します。
上記で「設計」と書いてますが、企画+狭義のデザイン+開発という一連を指した大きな意味の設計と捉えて下さい。
計画段階
- HCDプロセスの計画
設計段階
- 利用状況の把握と明示
- ユーザー要件の特定
- 要件を満たす設計の作成
- 要件に対しての設計を評価
※ 改善が必要であれば、それぞれのプロセスに戻ることを繰り返します。
完成
- ユーザー要件を満たした設計
設計段階の繰り返す行為は、間違っていたから差し戻すというネガティブな意味はありません。
ユーザー中心の考えでは、常にユーザー体験価値や本質的ニーズと照らし合わせ、確認しながら進める必要があります。
その為、サイクルを一回転させれば良い訳では無く、開発全体でこのサイクルを何度も回し、螺旋階段のスパイラルを降りながら、徐々に完成度を上げていきます。
いわゆるPDCAと考え方は似ていますが、PDCAのC(Check)は当事者の評価、HCDプロセスの場合の評価は、ユーザーを念頭に置いた評価、もしくはユーザー自身が評価するという違いがあります。
こういったプロセスを現場の開発にきれいに当てはめることは中々難しいですが、HCDプロセスは開発のどの段階からでも適用できる為、まずは、ユーザー、および、ユーザーの利用文脈を把握することからはじめることが望ましいです。
まとめ
ざっくりとUXデザインの教科書について紹介しました。
本書は教科書と呼ぶにふさわしく、UXデザインに関わる基礎的な知識から専門的な知識やプロセスまでが体系的にまとめられていて、UXデザインを正しく学ぶ上で最適な書籍だと思います。
普段、UXやユーザー体験と言うワードを口にしたり、耳にしたりすることはありますが、UX自体はユーザーの主観的なものであり、UXそのものに対して、私たちが直接手をつけることができないということを理解しないといけません。
だからこそ、製品・サービスを開発する際は、ユーザーを中心に考え、ユーザに対してうれしいと感じてもらえるモノを提供することを徹底する必要があり、その為にUXデザインの知識は無くてはならないものだと思います。
以上、UXデザインの教科書についてのざっくり書評でした。
本記事を最後まで読んでいただき、ありがとうございました。