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ランサーズ、エンジニア給与制度の改善について

terukura|2021年09月01日
エンジニア組織

こんにちは、ランサーズのVPoEの倉林です。

ランサーズでは、Lancers Open & Flat Recruitingの一環として2021年度からエンジニアの給与制度を変更しました。本記事では、変更前後の給与制度と、その背景にある課題について紹介します。

高騰する市場のエンジニア給与とランサーズ社内のギャップ

給与制度変更の背景にあったのは、市場のエンジニア給与とランサーズ社内のエンジニア給与のギャップでした。

近年、供給を遥かに上回る需要などを理由にエンジニアの市場価値は高まり、平均給与は高まり続けています。わかりやすいデータを参照すると、転職ドラフトの平均提示年収の推移を見ると2016年頃に比べて2021年は約50万円上昇しています。
(参考ページ:https://job-draft.jp/festivals)

市場全体の水準が高まる中で、ランサーズでは他社と比べて給与が低いケースがたびたび見られました。

 

ケース① 採用競合との比較

複数企業からの内定を受け取った候補者に対しての年収提案で、他社の提示年収よりも低い水準となり、入社に至らないケース。

ケース② 転職による年収増加

社内で経験を積んだメンバーが、従来の給与制度では正当に評価されず年収が上がらず、より給与が高い他社に転職するケース。


転職時に求めるものは、必ずしも給与の高さではないと考えています。
しかしながら上記の2つのケースでは、ランサーズでの仕事や会社のビジョン共感はありつつも、年収水準のギャップが理由でランサーズは選ばれませんでした。

ビジョンの魅力や働きがいに甘えることなく、年収でもきちんとメンバーに還元したい。
そしてそれが、優秀なメンバーを迎え入れ、活躍してもらい、強いエンジニア組織を作ることに繋がると考えています。

年収ギャップの原因は、全職種横並びの給与制度

市場と社内のギャップについて述べてきましたが、ランサーズという会社全体の給与が低いというわけではありません。エンジニア職種で給与ギャップが生まれた理由には、全職種横並びの給与テーブルがありました。

ランサーズは、等級ごとに下限上限の幅が定まっているスタンダードな給与制度を採用しています。
従来は、エンジニアにおいてもその等級が当てはめられていました。また、等級の昇格条件もビジネスサイドと同じ様に定められており、そこに大きな課題がありました。

エンジニア組織で評価するべきスペシャリストの存在

一般的にビジネスサイドで高く評価されるのは個人のアウトプットだけではなく事業、チーム全体のアウトプットを高めるマネジメント能力になるかと思います。
これは、ビジネスサイドにおいてはマネジメントによるチーム全体の成果向上が事業により大きなインパクトを与えることが理由です。

一方で、エンジニアの場合は事情が異なると考えています。
1つの技術的ブレークスルーは人数では測れない価値を持ち、事業を大きく前進させます。そしてそのようなブレークスルーを生み出すのはマネジメントによるものではなく、1人の優秀なエンジニアです。

エンジニアリングにおいては1人で10人、100人分の働きをすることも可能です。
そのためエンジニアはマネジメントだけでなく、スペシャリティという軸でも評価をすることが必要だと考えています。

エンジニアの活躍と事業インパクトの距離感

事業インパクトが大きい人・行動がより評価されるべきだということには誰しもが納得すると思います。しかし、その行動と事業インパクトの距離が遠くなり、因果関係が見えにくくなると正当な評価が得られないという問題も発生します。

新機能や新規事業は、それを生み出したこと自体ではなく、事業にどのようなプラスの影響をもたらしたかを重要視して評価されるべきです。
これは、エンジニアにとっては難しい評価軸でもあります。

例えば、新機能実装に必要な大きな技術的課題をエンジニアが解決したとします。
しかしその機能が事業へのインパクトを生み出せずに失敗に終わった場合、エンジニアの働きはどんなにレベルが高いものであっても評価されにくくなります。

ここで言いたいことは、エンジニアは事業インパクトに関係なく評価されるべきだ、ということではなく、事業インパクトをもたらすために必要な試行を下支えする役割を持ち、それ自体を評価する仕組みがなければ事業自体も停滞してしまうということです。

 

これらの考えから、ランサーズでは2021年度から下記の改善を行いました。

・エンジニアの給与テーブルを多職種と分け、市場水準に合わせて上限を上げる

・スペシャリストを評価する等級の新設

・等級基準をエンジニア独自のものに変更

改善の影響と今後の計画

上記の給与テーブルグラフを見て「等級内での上限金額は上がっているが、一部の優秀なエンジニアだけにしか影響がないのでは?」と思った方もいるかも知れません。

事実として、この給与テーブル変更に伴い、実際に給与の変更があったエンジニアメンバーは全員ではありません。

ここでお伝えしたいことが2つあります。
1つ目は、この取組みの目的はエンジニアの給与を適正化することで、全員の給与を上げることが目的ではないということです。そして2つ目は、上限の変更だけでは適正化は達成できない、今後も改善施策を続けていかなければいけないということです。

今後の計画

追加の施策として、2021年下期を目処に給与テーブルの下限を引き上げることを計画しています。

エンジニア独自の給与テーブルが設計され、いくつかの課題は解決に向かって進んでいます。しかし、高騰する市場のエンジニア給与の水準に合わせ、市場から見て正当な報酬を支払うためには、下限金額を引き上げていく必要があると判断しました。

また、エンジニアの評価制度については、今後も改善が必要だと考えています。
評価とは、どういう考えで仕事をしてほしいか、どういう人に入社してほしいかを示す経営に近い位置にある仕組みです。

エンジニア組織専属HRBPとして、経営メンバーとのコミュニケーションを通して、ランサーズのエンジニア組織がどうあるべきなのかを、評価を通して示していくことも重要と考えています。

社内で必要な「評価される側の改善」

エンジニアの給与テーブル変更の背景には、「エンジニアの事業インパクトが見えにくい」「エンジニアの貢献度を他部門が理解しにくい」という問題があります。
これらはエンジニア組織が自ら改善していくべきものです。

改善策としては下記を想定しています。

・エンジニア部門の業務内容を他部門に理解してもらう

・各施策におけるエンジニアの貢献を可視化する

これらの改善内容についても今後記事などで公開していく予定です。